ドローンのハイブリッド方式の勝算

ドローン


ドローン(無人航空機)は空撮やインフラの点検等の実用的な領域での活用が進められているが、限定的な飛行時間やペイロードの問題、さらに飛行の安定性などの課題も多い。これらに対して自動車で実用化されているハイブリッド方式による課題解決の勝算を考えてゆきたい。

ドローンの課題

今やドローンは動画撮影やインフラの点検など社会に欠かせないものとなっている。
一方でより実務的な使用を考えると様々な課題も浮かんでくる。

  1. 飛行時間(または飛行距離)が短い
  2. ペイロード(積載重量)が小さい
  3. 飛行が安定しない、特に風や気流の影響が大きい

1と2と3はそれぞれの解決方法には二律背反の関係にある。
バッテリー容量を増やせば飛行時間を伸ばすことができるが、その分重くなり、積載重量が減少する。
風の影響を小さくするためには、強力なモーターとプロペラが必要になるが、当然、電力消費も大きく、バッテリーを増やす必要がある。
なお、ドローンは基本的にはバッテリー交換方式で運用するため、EVのように充電インフラや充電時間に関わる問題は少ないが、電力残が少なくなると地上へ帰投するため、作業は中断される。

ハイブリッド方式のドローン

バッテリー容量の実務上の制約や課題に対して、ハイブリッド車のようにエンジンとモーターを併用して問題解決を図る動きがある。ここでのハイブリッドはシリーズ方式と呼ばれるもので、エンジンは発電専用となり、電力をバッテリーへ供給するのみでプロペラの駆動には関与しない。
いわば自動車の”日産e-Power”と同様の機能となる。

YAMAHA HPより

具体的にはヤマハ発動機が2021年6月の「Japan Drone 2021」にて発表した。
「シリーズ ハイブリッドエアコンセプト」と呼ばれるものがその1つです。
外観はヤマハらしい、ブラックカーボン調にブルーを配したカラーリングがスタイリッシュです。
エンジンは水平対向型、いわゆるボクサータイプを採用して上下高を抑えている。
なお、販売価格は未定です。

また、このエアコンセプトのユニークな所は連結して使用が可能なところです。
空撮やインフラ点検等に使用するタイプはエアコンセプト1基に4つ角にプロペラを設置した通常の形のドローンですが、ロジスティック用ではエアコンセプトを田の字の形に4つ連結した上で4つの角にプロペラを設置する。したがって、一般的にイメージされるドローンと比べて大変大型のものとなり、とても個人で気軽に扱えるものではなさそうで、用途も専ら業務用となりそうです。

スペックと見るとエンジンは390 ccであり、中型バイクのクラスです。
単体重量70 Kgではとても一人では扱えません。詳細な外寸は公表されてませんが、実証実験の動画を見る限り、プロペラを含めて軽自動車を優にしのぐ大きさのようです。
それでも、最大4時間の飛行時間は従来型ドローンを大きく超えるもので、最大荷重約25Kgと併せてこれまでになく実用度は向上します。

ドローン普及の原因

ドローンは自立型の無人航空機という意味ですので、様々なタイプがあります。
ここではマルチコプターと呼ばれる本体の周囲に4つとか8つとかそれ以上の複数個のプロペラを持つ電動のものに限定します。このドローンが急速に普及した理由は以下のように考えれます。

  1. リチウムイオン電池や強力なモーターによる動力性能の向上
  2. GPS、WiFi等の通信技術の進歩
  3. 各種センサー類と制御技術の進歩
  4. これらの技術を実装した安価なパーツの供給体制の拡充
  5. 小型・軽量で扱いやすい機体が出現して市場が急拡大した

スマホ等に牽引されて周辺技術や部品供給などの環境が整い、中国のDJIを中心に小型で扱い易い安価な機体の市場導入が相次いだ。ハードルが下がることでアマチュアが空撮等を趣味として楽しむ。ユーザーの裾野が広がるとまた、プロが様々な分野の業務領域でドローンを活用する。このような好循環が急速な市場拡大を産んだと考えれます。

ハイブリッド・ドローンの活路

結論的には、現状の電動ドローンをハイブリッド方式のドローンで置き換えることはできない。
電動ドローンが普及した前提理由が全て失われるためである。
現在の電動ドローンの弱点を補うものは、バッテリーやモーターの改良、各種センサーや制御の進化といった正常進化に委ねるほかはありません。

アマチュア用のドローンとは別にプロ用ハイエンド・ドローンも出てきました。
SONYから6月に発表された映像クリエーター向けのAirpeak S1がその一例です。デジタルカメラをそのまま搭載できて、ハイクオリティな映像を撮影するためのものです。

では、ハイブリッド・ドローンはどうなるでしょうか?
もちろん、インフラ点検やロジスティック、災害時の調査やハイブリッドの特性を生かして緊急電力供給などの専門業務領域での活用が期待されます。
しかし、真価を発揮するためには、単に長時間・高負荷での運用が可能だけでは不十分です。
車でいう”自動運転レベル4”、すなわち人の監視なく、特定地域での完全自動操縦が実現できれば、
ハイブリッドドローンは有人ヘリコプターと電動ドローンの間を埋める存在になれると考えます。

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