オリンピック2020東京大会の選手村の移動用の自動運転の「e-Pallete」をはじめとして、エリア限定ながらも各所で自動運転の実用化に向けて実証実験が行われている。その中でマツダは緊急退避に特化した自動運転機能 Co-Pilot (コパイロット)発表し、他社とは異なる取り組みをしている。
自動運転の実証実験とは
国土交通省では運転に関する政府戦略である官民ITS構想・ロードマップが示され、自動運転の実用化の取り組みを推進している。運転に係わる目標、現状、今後の取り組みは以下のようで、それぞれ実証実験が行われている。
- 自家用車(大量生産車)
高速道路でのレベル3の実現(2020年)
高速道路でのレベル4の実現(2025年目処) - 移動サービス
限定地域での無人自動運転移動サービスの実現(2020年まで)
限定地域での遠隔監視のみのサービス開始(2022年目処) - 物流サービス
隊列走行後続車無人システム、高速道路で技術的に実現(2020年)
自動運転トラック、高速道路でレベル4実現(2025年以降)
これらのうち実際に実現しているのは、1はホンダ・レジェンドが高速道路渋滞時限定ながら市販車として実現。2は東京オリンピックの選手村移動用の「e-Pallete」が代表例であり、各地で実施されている。3は「カルガモ走行」と言われるもので、トラックの先頭車のみが有人運転で後続車は自動で先行車を追随する実験済み。
イメージとは程遠い自動運転
現在行われている自動運転の実証実験の内容は、技術的な進展はあるものの、ユーザーの使い勝手から言えば、まだまだ納得される方は少ないと思います。「線路のない電車」レベルであり、東京の新橋と台場を結ぶ無人運転の電車「ゆりかもめ」や空港で遠いターミナルの移動用のシャトル便と大差はないと感じます。
自動運転と聞いて期待されるのは、やはりモーターショーなどでプロモーション映像として流れている「無人のお抱え運転手付きの車」のイメージでしょう。好きな時間と場所に迎えに来て、目的地に送り届けてくれる。車内では自由に仕事をしたり、リラックスした時間を過ごせる。そんなワガママを叶えてくれる車が自動運転です。上岡直見氏の著作「自動運転の幻想」によれば、自動運転の課題として以下の7つがあげられている。
- センサー類やAIによる認識や判断の機能が不十分
- 各場面での運転操作の最適なロジックが確立されていない
- 「レベル4」までは全てをシステム制御で対応できず、人間が担当する操作が残る
- 大量のデータ処理や通信が実際に可能なのか不確定
- 自動運転車と人間が運転する車が混走する際の意思疎通が必要
- 自動運転車のAIのために大量のデータ収集が必要となり、データのセキュリティの確保
- 自動運転車の事故の法的責任
この著書は2018年の出版であるため、現時点では解決の目処が立ってたり、技術的な進歩があるかもしれませんが、イメージには程遠いのが現実のようです。
マツダの自動運転の取組
自動運転車の開発は、自動車会社や新規参入を試みる巨大IT企業にとって絶好のアピールの場です。
各社の市販車や実験車の自動運転レベル競争は激しいものがあります。
しかし、自動運転車の開発は技術的裾野が広く、人材や資金の面でも巨大企業でなければ、
荷が重すぎ、とても対応できません。マツダもその中の一社です。そこで同社は違ったアプローチで自動運転の開発を進めています。
マツダは2020年に創業100周年を迎え「サスティナブル”Zoom-Zoom”宣言2030」を発表しており、その中で「Mazda Co-Pilot Concept」の取組があります。
Co-Pilotとは、ドライバーの緊急時に運転をシステムが引き継いで安全に停止させる機能です。
自動運転レベル2の技術をベースにして、モニタリングカメラでドライバーの運転をモニターして異常を察知した時に自動で安全に停車させます。
技術上の肝は「ドライバーの運転状況の異常感知」で空振りなく検知ができるかどうかで、
あとはコネクティッドによる異常通報、ADASによる車両コントロールにより車両を端に寄せて停車します。
自動運転の高度な自動化度合いを追求するのではなく、緊急時の安全性に特化した取組です。
ぜひ、普及してほしい技術と思います。
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