情報リテラシーから見た”ひろゆき”論

マーケティンxα(学び、楽しみ)

人気ユーチュバーの”ひろゆき”こと西村博之さんを勝手に分析してみようと思います。
”ひろゆき”は一見すると気楽に視聴者からの質問に答えているように思えますが、発信するユーチューブや書籍から見えてくるのが、よく練られたテーマの選び方やその回答内容です。
これらを情報リテラシーの観点から考えたいと思います。

情報リテラシーとは

そもそも「情報リテラシーは現代人の基本的な素養である」のような文脈で語られる「情報リテラシー」とは、そもそも何なのか、米国大学図書協会などによれば以下の6つの能力をいう。

  1. 情報ニーズを認識する能力
  2. 情報を発見・獲得する能力
  3. 情報及び情報検索過程を評価する能力
  4. 情報管理能力
  5. 情報に基づいて新たな理解を生み出せる能力
  6. 情報の背後にある問題を認識する能力

簡単に言えば「必要な情報を探し出し、これを活用する能力」とのこと。
これと対極な言葉が「情弱」である。
「情弱」は情報弱者の略として、当初は「携帯電話やインターネットの繋がりが悪い地域」に住む人のように主にインフラ面を指す言葉であったが、次第に「情報リテラシーに欠ける人」の意味合いが強くなってきた。
では、人気ユーチューバーである”ひろゆき”がどのように「情報リテラシー」を発揮しているのか見て行きましょう

勝手に”ひろゆき”論

”ひろゆき”を分析するといっても、もちろん私の知り合いでも、友人でも何でもありませんので、You Tubeと著書を基に話を進めさせていただきます。

彼のYou Tubeでの活動は、主に視聴者からの質問に答える形で、持論を展開してゆきます。
いずれの時も、ズバッと結論を言った上で、その理由を簡潔に答えます。
この状況を「論破した!」と評されるようです。

著作については、You Tubeでの自身での回答をテーマ別に整理した色合いが多分にありますが、例えば、「ひろゆきのシン・未来予測」などは、テーマや論点にベストセラー本の安宅和人さんの「シン・ニホン」の影響が感じられつつも、体裁に工夫があります。
1テーマで5ページ、1ページ15行、一行38文字の構成を基本に組まれています。
すなわち、1テーマ2,850文字、太文字の表題や見出しなども含まれるため、実文字数では2,500文字程度で構成されるフォーマットになっており、ブログなどでお馴染みのものです。
スマホ愛好者などにも違和感なく読んでもらうことを考えられていると思います。

自分でブログやYouTubeをやっている方なら、実感されると思いますが、世の中に向かって、ものごとを断定的に言うのはとても勇気と自信が要ります。
これを裏で支えているのが彼の「情報リテラシー」のレベルの高さです。
これらを順に説明します。

  • 充実したバックデータ
    結論の理由を説明する際には「日本の平均所得は405万円に対して、アメリカは690万円です。だから・・・・です。」このように実際のデータを基にした説明を入れることが多いです。そのため、言っていることの説得度がグンと高くなります。
  • 情報検索の速さと広さ
    最新の時事ネタをタイムリーに取り上げることや逆に「前にもこんな事件がありました。」として、回答するテーマに合わせて、実例を挙げて説明することもよくやってます。それこそ「情弱」の人々にとって豊富な情報量に圧倒されます。
  • テーマに対する世の中の”普通の意見”を知る
    これが最も重要で難しいことで、「情報リテラシー」のレベルが垣間見られます。
    いくら、ズバッと答えると言っても、度外れなことや正しくとも当たり前のことばかりでは、わざわざ”ひろゆき”の意見を聞く価値がありません。
    世の中で広く言われている意見の中心部分を探し当て、そこから適度に飛躍した(距離を置いた)意見を述べることで、切れ味の良い回答ができると考えます。

最後の要件である世の中の意見の中心とそれから飛躍した意見のあり方は、別ブログの「感覚を言葉で表す試みとは」の中で紹介しました水野 学さんの著書「センスは知識からはじまる」で説明された「普通のセンス」と「良いセンス」の関係性と共通するものがあり、この普通過ぎず、ぶっ飛び過ぎずの絶妙な飛躍具合が多くの人に支持されているポイントではないでしょうか

中国の大局的な歴史観

少し、昔話で恐縮ですが、情報に関して中国で経験した話をします。
中国は今や誰もが認める世界のIT大国として君臨しています。
しかし、30年前は違います。鄧小平が唱える改革解放政策によって、様々な産業が国営企業を中心にようやく産声をあげたばかりで、IT産業など芽も見られませんでした。
その頃、自動車にも様々な電子制御装置が使われ始めて、プログラムでものを動かすと言う概念や実例が世の中で知られ始めた時代です。

その当時、私は出張で中国の地方都市に行き、とある国営の自動車工場を訪問した時、正門横の壁に掛けられた黒板に目を奪われました。
ご存知の方もいると思いますが、かつての中国の伝統的工場では正門横に大きな黒板が設置してあり、通常は「労働者の力を結集して強国を実現しよう!」の様な共産主義らしい?政治スローガンが色とりどりどりのチョークで書いてありました。

しかし、その時書いてあったのは、「これまでは”言易行難”(言うは易く行うは難し)と言われてきたが、これからの時代は”言難行易”となる。すなわち、何をどうすれば良いか?と言う知識や知見が重要となり、実際にものを動かすことは重要でなくなる。」でした。

何とも中国らしい大局的なものの見方が妙に印象に残りましたが、その後の中国IT産業の発展を目の当たりにするにつれて、将来を予言するもので恐るべしと思った次第です。

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