中国の新興自動車メーカーNIO(ニーオ)を知ってますか?
今や世界一の自動車市場となった中国には、日本ではまだ知られていない新興の自動車メーカーが沢山あります。国を挙げて自動車産業の育成を図っているためです。特に電気自動車は従来型のガソリン車に比べて、高度な技術が必要なエンジンやトランスミッションといったコンポーネントが少なく、参入障壁が低いため、他業種から参入でこれまでにないビジネスモデルも現れてます。
中国の自動車産業
2020年の自動車販売・生産の国別トップ5は以下の通りです。(出典:JETRO)
- 中国:2,531万台(生産:2,523万台、生産ー販売:▲8万台)
- 米国:1,445万台(生産:882万台、生産ー販売:▲563万台)
- 日本: 460万台(生産:807万台、生産ー販売:+347万台)
- ドイツ:327万台(生産:374万台、生産ー販売:+47万台)
- インド:294万台(生産:339万台、生産ー販売:+45万台)
中国が生産・販売ともに世界1位です。
2020年時点では生産が販売を下回っていますが、今後輸出が増えるともに伸びて行くでしょう。
特に「新エネルギー自動車発展計画(2021年〜2035年)」により、新興の電気自動車の専業メーカーが異業種から参入が相次いてます。
新興メーカー総じて技術レベルが低く、低価格のみを売りにするところが多いのも現状です。
しかし、一際、異彩を放つメーカーが現れました。それがNIOです。
NIOは電気自動車を中心にした独自経済圏の確立を目指す
NIOは中国版テスラとも言われ、概要は以下の通りです。
- 2014年創業のEV開発・製造会社
- 主要出資元は中国の巨大IT企業のテンセント、バイドウ他
- 2017年に量産車ES8の発売を皮切りに現在4車種を販売
(2021年12月に5車種目の中型セダン「ET5」を発表) - 自社工場を持たないファブレス生産
(中国の国産メーカーのJACに委託、自社工場も計画) - サブスクリプションによるバッテリー交換や充電カー等の新形態のサービス
(BaaS: Battery as a Service) - その他、アプリ会員への各種ユーザーサービスを展開
NIOのEVは運転支援(ADAS)、自動運転や固体電池等の最新技術の取り組みとクオリティの高さを売りにしているが、これらは外部企業との提携によるものが多く、NIO自体が取り組んでいる事業の本質はEVを通したユーザーサービスによる事業収益にあると考えられる。
NIOの事業展開
(1)電気自動車の生産・販売
NIOの販売台数をみると、電動車の最大手BYDや米国テスラに比べるとまだ、差は大きい。
しかし、毎年、車種の追加と共に販売を順調に伸ばしており、2021年11月までの累計販売台数は16万台余りになる。
(2)充電サービス
NIO最新の「ET5」ではスタンダード:75kWh、ロングレンジ:100kWh、ウルトラロングレンジ:150kWh、3種類のバッテリー容量が用意されているが、これだけ大容量になると急速充電器を使っても相当な時間がかかるし、まして家庭での普通充電では一晩で満充電できない可能性がある。
そこで、バッテリーを丸ごと交換しようということで、バッテリー交換ステーションを設置している。
2022年度末までに中国全土で1300箇所の設置を計画している。
(充電ステーションは6000箇所を計画)
(3)NIO経済圏の創出
出資母体が中国(今や世界的)巨大IT企業のテンセントやバイドウであることから、NIOの事業領域は単にEV製造販売に留まらない。
携帯電話会社がスマホを核にクレジット、e-コマース、コンテンツ配信サービス等の事業展開しているのと同様に、NIOはEVユーザを核に車のアフターサービスはもちろん、NIO HOUSEの様な専用ラウンジ他、様々なITビジネスに取り込む、いわば”NIO経済圏”の確立を目指している。
まとめ
NIOは販売が順調に伸びても、当面はNIO単体での事業損益の黒字化はなかなか困難と思える。
しかし、テスラの様にEVに集中投資できることは既存の自動車メーカーより有利であることは間違いないく、注目する必要があります。
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