世界中でCO2規制が年々厳しくなり、各国政府はディーゼルやガソリン車を制限したり、各自動車メーカーも電気自動車 (EV)の導入を進めている。
それではEVさえ導入すれば、本当にCO2を削減できるのか?
特に最近言われるようになった製品ライフを通した評価(LCA)を踏まえて説明します。
EVによるCO2削減
2030年のイギリス、2035年のEUなど2040年にかけて欧州を中心にガソリン車・ディーゼル車の新車販売が禁止になります。注目すべきはハイブリッド車(HEV)も禁止車種に含まれていることで、事実上、EVの導入が新車販売の必須要件となります。
それに対応して、メルセデスは2030年までに、GMは2035年までに全車種のEV化を完了させると発表し、これに続く有力メーカーも続出しています。
但し、ここで注意が必要なのは、全車種EV化すると言ったメーカーも全ての国や地域で同じ対応とは限りません。今やEVの最大市場である中国や中東、アフリカ、中南米と言った地域ではガソリン車を禁止するような提案もなされていないし、現実的に充電インフラその他の問題から一気にEV化を推進することはできません。EV化はあくまでガソリン車禁止案が出されている欧米中心であることです。
CO2の排出量の比較
LCA (Life Cycle Assessment)でのCO2排出量とは、車の走行中はもちろん、その製品のライフサイクル全体(資源採取〜生産〜廃棄)での関連する全ての工程で発生するCO2の総量で評価する。
EVは走行中のCO2排出はゼロであるが、生産や電力供給に伴うCO2排出が多く、現時点の日本ではEVはHEVやPHEVよりもCO2排出が多いとされる。
上のグラフは通常のガソリン車のCO2排出量を100として、バッテリーEVにHEVの1形態である日産のe-PowerのCO2排出量をLCAで比較したものです。
EVに注目してみると、確かに走行中のCO2排出はありません。一方で製造段階でのCO2排出がガソリン車やe-Powerに比べて多くなってます。これは主にバッテリーの製造の際にCO2排出が多いためです。また、エネルギー製造もEVが多いのは、日本の場合、電力供給に風力や太陽光などの再生エネルギーの比率が小さいため、その電力を多く使用するEVはCO2が多い。したがって、EVのCO2排出量は従来型のガソリン車より少しマシな程度?です。
CO2排出量の低減策
この表は発売している電動車(EVとHEV)のバッテリー容量やモーター出力などの主要諸元です。
EVとHEVのバッテリー容量を比べるとEVが桁違いに大量のバッテリーを搭載していることがわかります。したがってHEVと同等な航続距離をEVで達成するためには40倍以上の膨大なバッテリーが必要となり、この点が製造段階でのCO2排出量に効いて来ます。
では、どうすればCO2排出量を削減できるかが問題となりますが、この点でもHEVとEVでは対応方法が異なり、EVでの対応は再生エネルギーでの電力供給を増やすことが重要となりますが、EVの増加にどこまで追いつけるのか、日本の現状ではかなり難しいと考えます。
一方のe-Powerを含むHEVはガソリンエンジンがシステムに組み込まれているため、このガソリンエンジンの熱効率(使用した熱エネルギーがどのくらい動力に変換できたか)を向上させることでCO2排出量の削減を図ることでできます。
但し、長年、研究・改良を積まれたガソリンエンジンで、更なる熱効率の向上は簡単ではありません。
通常のエンジンの熱効率は30%以下、つまり使った熱エネルギーの70%以上がそのまま排気ガスと共に放出されているので、これを何とか熱効率50%を目標にトヨタ、日産を始め各社で研究が続けられています。
まとめ
再生可能なエネルギー(グリーン電力)でEVに充電ができる場合には、EVによるCO2低減効果は大きいが、電力を化石燃料に頼らねばならない場合には、様々な取り組みが必要となる。
それまでは、低燃費車で頑張るしかありません。
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