宇宙ビジネスの盛り上がりは本物か

新事業・新技術・新商品

最近、宇宙に関する新規ビジネス参入の報道が相次いでいます。
2021年7月にはヴァージン・ギャラティック社の創業者リチャード グランソン氏やアマゾン創業者のジェフ ベゾス氏による有人宇宙飛行が成功し、様々なメディアで民間会社による宇宙旅行時代の幕開けとの捉え方で多く報じられました。
これまで宇宙に関する事業は、アメリカやロシアなどの大国が国の威信をかけて取り組むもので、民間が参入してもかなり限定されたビジネスとのイメージの方がほとんどだと思います。
この様な宇宙ビジネス、特に民間が参入しつつある分野を説明します。

宇宙ビジネスの注目分野とは

そもそも宇宙ビジネスと言っても、どんな分野があって、民間事業として参入が可能なのか?、どのくらいの市場規模なのかピンと来ない方も多いと思います。「宇宙エバンジェリスト」の青木英剛氏によると、宇宙産業は現在約40兆円の市場規模であるが、20年後には100兆円を突破が見込まれるとのことです。特に民間主導の分野として①「宇宙インターネット」、②「宇宙ビッグデータ」、③「惑星探査」、④「宇宙旅行」4つのトレンドがあるそうです。

ところで、青木氏の「宇宙エバンジェリスト」の肩書きは目を引きます。普通であれば、コンサルタントとか、プランナーとか、はたまた実業家、あるいは単に科学者、研究者とかであれば、納得感があるかもしれません。しかし、宇宙エバンジェリストとは直訳すれば、宇宙の伝道者です。これからは宇宙がビジネスチャンスとなり、既存の産業構造に少なからず影響を与えるものとなる。だから、夢とか憧れではなく、具体的にビジネスを考えて、動き出しましょうとのメッセージを発信されているものと思います。

動き出した宇宙ビジネスの具体例

(1) 宇宙旅行
冒頭に話が出たヴァージン・ギャラクティックやブルーオリジン社の有人宇宙飛行はわずか3〜4分の宇宙空間での無重力体験で20万ドル〜45万ドル(約2800万円〜6300万円)です。確かに、国が多額の費用を掛けて訓練したエリート宇宙飛行士でない、一般の民間人が宇宙体験できるようになったことは、大きな進歩であると思います。

しかし、本来であれば、国際宇宙ステーションの様なところにせめて1泊して、自分たちの住む地球を隅から隅まで目に焼き付けておきたいし、暗闇に光る無数の星や銀河を眺めたり、はたまた地上の親しい友人に電話して、「今、君の真上にいて何でもお見通しだよ」とか言って驚かしてみたい。これらを実現するには、もう少しだけ時間がかかるかもしれない。

日本でも、2020年1月に大分県とヴァージン・オービット社(米国)と提携して、大分宇宙港の計画が発表された。航空機にロケットを搭載して離陸し、上空でロケットを発射させる方式で2022年にも初号機が打ち上げ予定とのことです。

(2)宇宙インターネット
インターネットといえば世界中と繋がり、特に先進国ではもう既に十分にインフラが整備されて、今更、わざわざ宇宙インターネットなどやる意味があるのかとお考えの方もいるかと思います。しかし、IT先進国の米国でも国土が広いせいか、Netflixの様なインターネットサービスが受けられない地域が残っています。また地球全体では約40億人がインターネット接続できない状況です。

これらの地域に地上でのインフラ整備は限界があるため、人工衛星を使った宇宙インターネットが必要になります。また、事項で説明する宇宙ビッグデータでは、衛星で集めたデータを受け取るにも宇宙インターネットが活躍します。

この分野に日本ではソフトバンクと楽天が動き出しました。
ソフトバンクは3種の高度の衛星で用途が異なる非地上系のネットワークを構築し、楽天は多数の衛星を利用したスマホと衛星の直接通信を発表しました。

①ソフトバンクの計画
ソフトバンクが発表した内容は非地上系ネットワークと呼ばれるHAPS, LEO, GEOの3種類の衛星ネットワークを網羅しており、それぞれ強みを持つ企業と連携して、一気に構築することを目指している。

②楽天の計画
楽天の発表内容はこれまでの常識を覆すものでした。LEO(低軌道衛星)による携帯電話のネットワーク構築であるが、スマホと衛星の直接通信することが最大の特徴です。衛星通信はスマホの電波を衛星が直接受信するには、電波が弱すぎるため専用の機器を使うのが常識でした。それを可能とするために衛星に巨大なアンテナを装着することで技術的な解決が可能とのことです。

(3)宇宙ビッグデータ
ドローンや航空写真では絶対に撮れない広範囲の画像を取得し、画像分析によって得られるデータをもとに、農業や災害防止に活用したり、中には駐車場の車の台数データから商業施設の売り上げ予測に活用する例もある。
これまで軍事利用など国家機関に限られてきたこの分野は、民間ビジネスにとっても比較的参入障壁が少なく、アイディア次第でチャンスが拡がるとみられる。

(4)惑星探査
JAXA(宇宙航空研究開発機構)による”はやぶさ”及び”はやぶさ2”の活躍により、俄然、惑星探査が注目を浴びましたが、今後はこの分野でも民間ビジネス可能性があります。但し、この場合はアンカーテナンシーとして政府が最初の顧客となり、事業の立ち上げに初速をつけること必要になります。

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